デザイナーから経営者になるためにやってきた5つのこと

  • 2022.3.29.火
  • 2022.2.22.火

若いデザイナーが起業して失敗した話」というGoodpatch Anywhereデザインマネージャーの大堀さんが書いたnoteを読みました。

筆者も24で独立し、デザイナーから経営者になった身なのでとても共感できることが多く、刺激を受けました。

これに触発され、起業してこれまで経験してきたことを、自分なりの視点で振り返ってみようと思います。

自分の仕事を言語化する

まず自分が普段やっている仕事を、他の人ができるような状態にしました。言語化できない仕事というのは再現性がありません。
つまりいつまで経っても自分のやっている仕事を同じクオリティで他人に任せることができないということです。

正直、これに関してかなり苦労したのですが、1流のデザイナーたるもの言語化できないことはデザイナーの恥。時間をかけて自分が培ってきた知見や仕事の流れをワークフローに落とし込んでいきました。

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notion内にノウハウを全て言語化・ストックしている。

【起業してからやってきたこと】
自分がこれまで仕事で大事にしてきた心構えやノウハウ、仕事の流れを全5職種、計1.5万字まで言語化し、ワークフローやガイドライン、マニュアルに落とし込み、オペレーション化しました。(フロントエンドエンジニアのワークフローは2022年春に完成予定)
また自分がよく利用していた有益参考/素材サイト・便利ツールを100個厳選してまとめたり、Figmaの基本ルールを6つに集約したり、ライティングルールを21のチェックリストにまとめるなどして、これまで「ひとりのもの」だった知見やノウハウを全てnotionに言語化・ストックすることで「みんなのもの」へ変換していきました。

【今すぐできる具体的なアクション】
・自分がやってきた仕事を、マニュアルに落とし込む
・普段自分がやっている業務を、他に人が理解できる言葉に変換する
・自分の思考プロセスを分かりやすく言語化する
・普段自分が大事にしている心構えや哲学を言語化する
・参考サイトや便利ツールをまとめてストックする
・普段、お客さんに対して伝える言葉をテンプレート・雛形化する
・普段、メンバーに対して指示する内容をテンプレート・雛形化する
・議事録の雛形をnotionでテンプレート化する
・プロジェクト定義書の雛形をnotionでテンプレート化する
・スケジュールガントチャートの雛形をnotionでテンプレート化する
・お客さんに対して毎回回答することをマニュアル化する
・採用のワークフローやオペレーションをマニュアル化する
・1日に2回以上行うルーティンワークは基本仕組み化する癖をつける

人に頼る

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とにかく人に土下座しまくりました。人に頼り、仕事を任せ、人の力を借りるためには、土下座する姿勢を厭わないという意志を持つことが大事です。

人に頼れないということは、いつまで経っても1人で仕事を抱え込み、プレイヤーを脱却することができないということです。
1流のプレイヤーが必ずしも、1流の経営者になれるとは限りません。

ほんとに経営者の仕事ってこれっすわ。

【起業してからやってきたこと】
自分がこれまでやっていた業務を営業プロデューサー、Webディレクター、アートディレクター、コピーライター、ロゴデザイナー、リードデザイナー、デザイナー、フロントエンドエンジニアの全8職種に分業し、それぞれの役割と責任、業務範囲を明確化した後、徐々に自分が担当していた業務を人に頼るようにしました。バックオフィス業務は税理士、弁護士、社労士、総務・経理、人事に頼り、資金調達では様々なVCの方や、元銀行員の知り合い、友人の経営者に、採用・組織づくりは同じ業界の経営者や人事、コンサル、デザインマネージャーさんにたくさん頼らせていただきました(皆さん本当に感謝してます🙇‍♂️)
1年目は全業務の8割ほどをほぼ1人でこなしていましたが、おかげさまで現在は2〜3割程度になり、徐々にマネジメント業務にリソースを使える状態になってきました。

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Maslowにおける各職種の役割。
頼るだけでなく、人に頼れる状態に整備しておくのも経営者の仕事。

【今すぐできる具体的なアクション】
・自分の業務プロセスを細かく分解する
・業務プロセスの範囲ごとに各職種を創る
・各職種の役割と責任・業務範囲を明確化する
・自分の担当範囲の一部を少しずつ人に頼る
・自分が苦手な仕事は今すぐその道のプロに頼る
・自分ができることでも今すぐ人に頼る
・採用や組織づくりは知り合いの経営者や人事、コンサルに頼る
・バックオフィス系業務はプロに頼る
・頼ることに躊躇しない。もはや経営者の恥だと思う。
・手を動かすのをやめて「これ、自分がやらないようにするにはどうすればいいんだっけ?」を考え、実行する
・1日に1回以上は人に頼るとルールを決める
・パートナーや家族、友人に頼る練習をしてみる
・人に頼ることを止めているものってなんだっけ?と自分に問いかける
・ただし自問自答はとても難しい技術なので、コーチングしてもらう
・1回頼るごとに自分にご褒美をあげるなど楽しめるルールをつくってみる

組織をデザインする

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組織変革のために資金調達を実施しました。
また経営理念のアップデートと経営理念に基づいた評価制度・グレード等級の策定を行いました。

サイトをデザインすることは経営者の仕事ではありません。デザインすべき対象は「組織」です。(過去の自分に言ってやりたい)

Maslowに念願のコピーライターがジョインしました。わーい🎉

【起業してからやってきたこと】
融資で2000万の資金調達を実施し、その4分の3ほどを採用・組織づくりに投資する意思決定をしました。(現在実行中)
また1週間ほどかけて、ミッション・ビジョンのリニューアル&会社資料のアップデートを行い、バラバラだったベクトルの統一と事業ポートフォリオを1つに集約しました。
そして全8職種・各職種9項目・各項目10点の合計90点で算出&6レベル・18グレードに及ぶプロジェクトにおける職務遂行能力を基準にした独自の評価制度の策定でクリエイターの適正な市場価値の定義及び個人の自己実現をサポートする体制を強化(試験運用中)
その他40に細分化された採用フローの構築や1週間かけて行うエンプロイーオンボーディングプログラムの作成、合計5時間ある研修動画の収録、Wantedlyの運用、アワードの開催などを行い労働生産性・従業員体験向上の仕組みづくりに力を入れました。

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Maslowのプロジェクトにおける職務遂行能力を基準にした評価項目(β版)。
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クリエイターの適正な市場価値の定義と個人の自己実現のサポート、そして報酬に対して納得感を持てるようにするためのグレードシステム。最適解を模索し続けることが不可欠だと考えているため、一旦は2022年3月まで試験的に運用し、4月から本導入できるように社内で進めています。

【今すぐできる具体的なアクション】
・パーパスやビジョン、ミッションを考える
・企業の目的や使命を考えなおすためエグゼクティブコーチングを受ける
・経営理念に基づいた事業ポートフォリオに整理する
・ロゴ、コーポレートサイト、会社資料などタッチポイントにおけるコミュニケーションを見直す
・自社にあった評価制度を策定する
・採用フローやオペレーションを改善する
・思われたい理想のブランドイメージを定義する
・新しい人がスムーズに業務に入れるようなオンボーディングプログラムを作成する
・研修を実施して、動画を収録&ストックする
・バリュープロポジションを見直す
・メンバー一人一人に、1on1を実施する
・採用においても仕事の振り方にしてもwill,can,mustの重なる領域が広いかどうかを意識して判断する
・どうしたら自分が成果を出せるか?でなくどうしたらメンバーが成果を出せるか?を常に考え抜き実行する
・従業員体験をより良くするための施策や活動を行う
・誰よりも企業の価値観に沿った行動を心がける
・個人に依存しないための仕組みとルールづくりをする
・メンバーが強みを発揮できる環境やポジションを作る
・自分が言われたら気持ちいいコミュニケーションを心がける
・スタンプや絵文字を適度に使って、感情報酬のプレゼントをする
・組織マネジメントの名著をたくさん読む
・Googleやリクルート、メルカリなど組織設計が素晴らしい企業の制度を真似してみる
・業績が好調な同業の他の会社の組織文化や制度設計を真似してみる

やらないことを決める

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やらないことを定義し、それを守るようにしました。
現代経営学の父、ピーター・ドラッガーやスティーブ・ジョブズも「やらないことを決める」重要性を歴史で語っています。

デザイナーさんだと感覚的に理解できると思うのですが、足し算より引き算の方が効果が高いケースが多いです。いいデザインを生むために、無駄を省いていくプロセスと同じように、いい成果を生むためにはやらないことを決め、意思決定していく必要があります。

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何をするかより、何をしないかが重要:引用

【これまで決めてきたやらないこと】
・コンペには参加しない
・代理店は条件付きでしか受けない
・広告は打たない
・アウトバンド営業はしない
・値下げはしない
・短納期は受けない
・見積もりだけ提出はしない
・下請け企業の関係性にはならない
・スキルだけで人を採用すること
・ポートフォリオだけで人を採用すること
・個人の判断だけで人を採用すること
・経営理念や価値観に合わない人を採用すること
・失敗やミスを人や環境のせいにすること
・時間やお金を浪費すること
・資産にならないことにリソースを使うこと
・自分の成果にすること
・やったことないを言い訳にしないこと
・相手を決して否定しないこと
・無駄なプライドを持つこと
・仕事において個人的な感情で判断すること
・会社にとってプラスにならない経費を使うこと
・生産性の低い仕事をすること
・自分がやらなくてもいい仕事をすること
・従業員体験を下げるようなこと
・一人一人の強みを生かさない仕事をお願いすること

【今すぐできる具体的なアクション】
・普段、何にどれぐらい時間を使っているか可視化する
・得意じゃないことを箇条書きして、これはやらないと約束できることをピックアップする
・普段無意識的にやってないこともあえて言語化してルールブックにまとめてみる
・自分がやりたくないことに対して、それをやらないようにするには何をすればいいんだっけ?を考え、実行する。
・経営者として「やりたいけどできていない」「やめたいけどやめられてないこと」を箇条書きで書いて、これはやらないと約束できることをピックアップする
・採用や受ける仕事の判断において、曖昧な許容範囲やルールを明確化する
・尊敬する経営者に「やらないこと」をヒアリングする
・業績が好調な同業の他の会社が何をやっていないか?リサーチしてみる
・やらないことを公言し、きちんとお客さんに対しても伝える努力をする
・もしやらないことをやったら、罰金を課すなどゲーム化してみる

経営者としての自覚を持つ

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デザイナーから経営者になるために、経営者としての自覚を持つことを強く意識するようにしました。
「自分は何者なのか?」というセルフイメージが行動や習慣を変えていくからです。
とはいえデザイナー出身の経営者がこれを行うのはハードルが高く、筆者も職人気質なデザイナー人格がまだ根強く残っている感覚があります。

【自分がやってきたこと】
エグゼクティブコーチングで「自分にとっての理想の経営者」を深ぼってもらったり、自分の中で経営者の役割や責任を明確に定義するためにピーター・ドラッガーの著者を読みまくったりしました。
また自分が意思決定するプロセスにおいて「自分が理想とする経営者だったらどうするか?」とか「どういう言葉を投げかけるだろうか?」をメタ認知して判断するようにしました。
ただ正直、自分もまだまだ自覚が足りていないので、これからの課題です…

日本で初めて上場したデザイン会社、Goodpatchの土屋さんは営業出身であることが強みになったと語っている。とても背中を押される。

【今すぐできる具体的なアクション】
・自分の理想とする経営者の役割や責任を定義する
・自分が目指している経営者を決める
・自分が憧れている経営者のTwitterをフォローする&本や記事を読む
・自分が憧れている経営者が普段している情報収集を徹底的に真似る
・その人だったらどう考えるか?を軸に判断する癖をつける
・自分の行動や言動、振る舞いが「1流の経営者」なのか?を自問自答する
・エグゼクティブコーチングをしてもらう
・ドラッガーの「マネジメント」を読む
・「はじめの一歩を踏み出そう」を読む
・業績が突き抜けている経営者友達に、普段どんな業務をしているか?普段どんな意識で仕事をしているか?ヒアリングしてみる
・経営者としての意思決定の判断軸を決め、それをブラさない。
・自分の経営哲学を言語化して、ルール化する
・Twitterで経営者だけフォローするアカウントをつくる
・成果を出している目上の経営者の方に相談してみる
・経営者として何が足りていないのか?先輩経営者にフィードバックしてもらう

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個人的にかなり共感できたドラッガーの定義を参考に自分なりに経営者の定義を考えてみました。デザイナーの方にはドラッガーの本はなかなか難しくとっつきにくい印象があるんで「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」をまず読んでみることをおすすめします。

一番大切なのは「自分がどうありたいか?」

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とはいえ、人によってなりたい経営者像って全然違うと思いますし、むしろみんな違ってみんないいと思います。スケールすることも資金調達することも上場することも全て手段でしかありません。

最終的には「自分がどうありたいか?」なので、あくまで自分にとって理想の「経営者像」を解像度高く、追求し続ける意志が大切なんじゃないかなと思います。
経営者になることを目指すよりも、自分なりの「自己実現」を目指してみる方がなんか楽しそうじゃありませんか?

最後に

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筆者は「世界で活躍する1流の経営者」になることが理想のキャリア像

デザイナーから起業してやってきたことを6000文字程度でまとめました。
これから法人化を目指すデザイナーさん、経営者として成長していきたい方の背中を押せるような内容になっていれば嬉しいです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

TAKUNORI ADACHI

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